II.ふるさと納税と配偶者控除

あけましておめでとうございます。 2016年はイギリスのユーロ離脱確定、トランプ氏の大統領選勝利、世界各地でのテロ等世界を驚か せるニュースが多かったように感じますが2017年はどうなるのでしょうか。 さて、2016年の税に関するニュースで私が気になった2つの件について雑感を少し。 【ふるさと納税】 自分の生まれ故郷などに寄付すると所得税や住民税が軽減される「ふるさと納税」について、東京23 区でも返礼品を用意する区が増えてきているというニュースがありました。 これは高級和牛やえび・かにといった豪華なお礼の品目当てにふるさと納税をする人が増える一方で、 都市部の税収が減少しているためにとった措置です。 高齢化による医療費の増加や待機児童対応など都市部でも、限られた財政の中で必要となるお金は増え ています。 税収の少ない地方になんらかの方法で財源を移すことは必要だと思いますが、もともと住民税は応益負 担の原則に基づく税と考えられています。応益負担の原則とは行政サービスを受ける対価として住民税 を負担するという原則です。 ふるさと納税のように実質的に住民税を居住地域以外へ移転するような制度にはなじまないように思い ます。 また、現在のふるさと納税は返礼品競争になってしまっていて寄付を通じて地方を応援するというふる さと納税本来の意義からもはずれてしまっているようにも思います。 【配偶者控除】 一億総活躍社会のスローガンのもと、女性の就労を妨げる大きな要因となっている配偶者控除をなくす 方向ですすめられていた税制改正ですが、ふたを開けてみればなんのことはない配偶者控除の拡大にな りそうです。 配偶者の収入について2017年以降は以下のような壁ができます。 103万円の壁 (企業が配偶者手当を出す基準とする場合が多い) 106万円の壁 (大企業に勤めるパートさんが社会保険に加入となる基準) 130万円の壁 (上記以外の人が社会保険上、配偶者の扶養からはずれる基準) 150万円の壁 (税法上の配偶者控除を受けられる基準) さらに150万円を超えた人には段階的に控除額を減らすことになるそうです。また、配偶者控除を受 ける本人についても段階的に所得制限がかかるそうです。 こんなに壁だらけで複雑な制度ではかえって、女性の就労を阻害してしまうのではないかと危惧します。 また、共働き世帯や独身世帯などの不公平感が増してしまうのではないかと思います。 働く、働かないは個人や各家庭それぞれの考え方でいいと思うのですが、あえて扶養の範囲で働いてい る人を税制がそこまで優遇する必要があるのか疑問に思います どちらの制度についても考えさせられるのは税の大原則である公平性の原則について、税制を考えてい る人たちはあまりにもないがしろにしているのではないかということです。 とれるところからとる。選挙で不利にならないように税制をねじまげる。そんな感じがしてなりません。

(税理士・CFP 廣崎 英子) HP:横浜の税理士 廣崎英子税理士事務所 ブログ:税理士 ときどき ランナー