II.相続対策(その7)配偶者の税額軽減

【制度の概要】 相続税には配偶者を優遇する配偶者の税額軽減という制度が設けられています。 この制度は配偶者の遺産形成に対する貢献や今後の生活保障を考慮して設けられた制度です。 具体的には、被相続人の配偶者が相続により実際に取得した遺産の額が、次の金額のどちらか多い金額 までは配偶者に相続税はかかりません。 1. 1億6千万円 2. 配偶者の法定相続分相当額 【手続き】 この配偶者の税額軽減は、相続税の申告期限までに分割されていない財産は税額軽減の対象になりません。 ただし、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、申告期限から3年以内に分割 したときは、税額軽減の対象になります。 なお、相続税の申告期限から3年を経過する日までに分割できないやむを得ない事情があり、税務署長の 承認を受けた場合で、その事情がなくなった日の翌日から4か月以内に分割されたときも、税額軽減の対 象になります。 【注意点】 配偶者が法定相続分を超える財産を取得した場合には、2次相続の相続税の負担が大きくなり、1次、2次 を合わせると合計税額が多くなることがありますので注意が必要です。 例えば遺産が1億6000万円あり法定相続人が配偶者と子の二人だった場合 パターン1 法定相続分どおりに分割       配偶者の相続税は0円       子の相続税は1,070万円 パターン2 配偶者が一人で相続       配偶者の相続税0円       子は相続財産なしの為 相続税0円 上記の場合パターン2の方が合計の税額が少なくなります。 しかしこの配偶者に固有の財産がなく、相続した財産をそのまま残して2次相続が始まった場合以下のよ うになります。 パターン1の場合 子の相続財産 8,000万円    相続税 680万円    パターン2の場合 子の相続財産 1億6000万円    相続税 3,260万円 1次2次相続の合計税額 パターン1 1,070万円+680万円=1750万円 パターン2 0円+3260万円=3260万円となり 1次2次相続の合計ではパターン1よりパターン2の方が多くなるのです。 1次相続での遺産分割は残された配偶者の生活を考慮しながら、2次相続のことまで考えることが大事です。

(税理士・CFP 廣崎 英子) HP:横浜の税理士 廣崎英子税理士事務所 ブログ:税理士 ときどき ランナー